KOTOBAYA 雑記帳

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機械は壊れる 人間は間違える 13:00
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    わが家の家訓が「機械は壊れる 人間は間違える」だ。家訓というほどたいそうなものじゃないけど、失敗ごときでくよくよするなって意味で使ってるんだ。

     

    PCもスマホも日常生活には欠かせないものになった。使い始めがちょっと手間がかかるので、いったん設定したら一生使いたい勢いだけど、そうはいかないのが現実だよね。でも、機器を更改することでさらに便利になったり、使い勝手がよくなったり、買い換えていくことで世界がぐんと広がったりするもんね。蛍光灯も取り換えるのは面倒だけど、えいやっとやってしまうと、そこに広がる別世界!

     

    人間のほうはどうかというと、やっぱり間違えることがある。どんなに注意していても完璧というのはないんだよね。特に疲れていると、判断を間違えたり、うまく対応できなかったり、感情のコントロールができなくなったりする。おとなしく言うことを聞いてくれる便利な存在が自分だと思っていると、思わぬ逆襲をくらうことがあるから要注意だ。やっぱり自分のメンテナンスはしっかりしないとね。

     

    そうやって自分のことが客観的に見えてくると、周囲の人のちょっと気になる言動も、今はちょっとメンテ不足なのかなって理解できて、お互いさまって思えるようになるよね。ここのところSNSの普及で他人の失敗に必要以上につけこむ風潮があるけれど、そんなことしたら自分が失敗したときにどうなるのか心配になっちゃう。迷惑かけたりかけられたり、そうやって変化だらけの忙しい世の中をみんなで乗り切っていきまっしょ。

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    まだかなまだかな 21:00
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      「ポケモンGo」が気になって仕方ない。現実世界とバーチャル世界のコラボなんてすてきすぎる。まだ日本じゃ肩すかしばっかりだけど、海外の反応の記事を読むたびわくわく感が増していく。「よーし。これで日ごろの運動不足も一気に解消だ! 」なんて想像してみるけど、実はどこまでやりこめるかからっきし自信ない。私を外に連れ出さずにはいられなかったら、「ポケモンGo」はもはや医療機器だ。


      「ねえねえ」と話しかけたとき「なあに?」って返事してくれる人の存在って大事だよね。それがもしもポケモンのバリヤードだったらどんなに楽しい毎日だろうと子どもみたいなこと思っていたけど、この調子でいけば、もしかしたら生きているうちにその夢が実現するかもしれない。「ゲームなんて」「スマホなんて」と言う人には、「はい。おっしゃるとおりです」とでも言っておこうかな。あーあ、バリちゃんと同居したいなあ。

       

       

       

      その後談。ポケGOは半年たらずでだんだんやらなくなってしまいました。あんなに楽しみにしてたのに、やっぱゲームはごろんと寝そべってだらだらやるものでしょ? ちなみにバリヤードは入手がかなり困難と知って、ますます元気がなくなったのでした。それでもやっぱりロボットと同居したら楽しいと思うんだよね。Siriとおしゃべりしても案外楽しいもん。あの受容的態度は見習わないと。ときどき回答を大きく外すけどね。

       

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      いじわる神様ウエルカム! 08:22
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        初詣を今年もサボってしまった。神社は目の前なのに、これじゃ神様に恨まれちゃうかな、いいや、神様に限ってそんなはずはない、そもそも参拝しないことに腹を立てる神様は神様として修行が足りないんじゃないかな、なんて不遜なことを考えていたら、「いじわる神様」のことを思い出した。

        長谷川町子さんは、もちろん『サザエさん』で有名だけど、『いじわるばあさん』もなかなかだよね。そのコミックの中に「まんが幸福論」という短編があって、いじわる神様が出てくるんだ。

        とっても恵まれた運命の下に生まれた1人の赤ちゃん。でも、いじわる神様がその人生を悲惨なものに変えてしまおうとたくらむんだ。だけど、それに「待った!」をかけたのがやさしい神様で、そのおかげで赤ちゃんは、裕福な家庭で社会的にも高い地位も築き、いわゆる「幸せ」な人生を全うする。

        だけど、当の本人は最期にこんなふうに言うんだ。うろ覚えだから正確かどうか不安だけど、自分の人生はつまらなかった、本当は人とのかかわりを断って無人島で動物たちに囲まれて暮らすような生き方がしたかったってね。なななんと、それはいじわる神様が与えようとした人生そのものだったってわけ。………だんだんとその機微がわかるようになってきたのは、自分なりにちょっとばかし人生経験を積んできたからなんだろうか。

        さてはて、私自身のことだけど、もしかしていじわる神様に運命を変えられちゃったのかなと思ったりすることもある。だけど、それがいいことなのか悪いことなのかを決めるのは自分自身なんだよね。今年はどんな年になるのかわくわくドキドキだけど、いじわる神様が玄関先にやってきたら「ウエルカム!」と言ってみようっと。ひるんで退散してくれたらそれもそれ、いじわる神様が同居すると言い張ったらそれもそれだよね。粗食ではあるけれど、大いにもてなしてあげますよん。

         

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        みんな「バスがこない」せいなんだ。 13:11
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          こりゃいい。なーんだ。みんなバスが来ないせいにしちゃえばよかったんだ。都合が悪いことはみんな「バスが来ないせい」なんだからしかたない。歩いていくとか自転車に乗るとか車の免許を取るだとか、そんなナンセンスな提案はいけませんよ。バスじゃなきゃだめなんです。自分ではどうしようもないことが原因じゃなくちゃいけないんです。「しかたがない」というなぐさめは、多くの場合、まじめな人を救います。


          でもなあ、こんな冗談言ってる場合じゃないほど田舎のバス事情は笑えないものがある。地方で生きていくには車が必須だよね。だから、高齢になって車の運転技術が心配になってきても、なか運転免許証を返納できないのも現実だよね。

          それでも安全にはかえられないっていうことで、実家の父も周囲の勧めで運転をやめてから、あれよあれよという間に元気をなくしていったっけ。やっぱり人は移動しなくなるとだめになるんだと思う。「ちょっと乗せてって」の一言を家族に言えなかったんだよね。娘だからそのあたりはすごくわかる。私、お父さん似だから。

          最近、GPSを駆使して、ハンドルもブレーキもアクセルもない運転しなくていい自動車が開発されているけど、あんなのが普通に走っている世の中だったらよかったのにな。お父さん、これを天国に送るから、先に逝って待っていたお母さんとドライブしてね。それじゃあね。元気でね。


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          おりこうさんになれないすべての人に『高橋優のススメ』 00:33
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            優くんより好きなアーティストがまだいない。きっとずっといない。それでいい。むしろそのほうがいい。大人になったら(?)CDを大人買いするからね。待っててね、優くん。高橋優くんは実存主義者なのかな。音楽界のショーペンハウアーとでも呼んでしまおうか。いや、むしろフランクルのほうが近いかな。ちがーう!! やっぱ優くんは優くん。なにものにも束縛されない彼の言葉で「にんげん」をうたってほしい。

             

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            ヒノリンに癒されて 22:06
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              「Dr.倫太郎」を見終わると、毎回決まって涙が止まらなくなるのはなぜだろう。だれかが癒されるのを見ると自分も癒されるってこころの働きがあるそうだけど、それなのかなあ。なんか、自分でも気づいてない深いところにあったものがどんどん前に出てくる感じなんだ。見てる人みんなそんなふうに思ってるのかな。自分でもびっくりだ。「あんな精神科医がいたらいい」って中園ミホさんのコンセプトらしいけど、倫太郎は今、日本中を癒しているのかもしれないね。
               
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              タカアンドトシの教え 21:42
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                タカアンドトシってすっかりお茶の間に浸透しちゃってるよね。「○○か!」がはやったのがかれこれ10年前か。10年って早いなあ。タカもトシも抵抗なくすっと入ってくるところがいい。嫌いになる要素がぜんぜんないんだよね。

                あんまりバラエティは見ないほうだけど、たまたま目にしたある番組は今でも私の心の支えになっている。何年も前、まさにタカアンドトシの絶頂期だったと思う。

                よくあるへんてこな番組で、気味悪い洞窟みたいなところに無理やり探検に行かされるって展開になって、その洞窟が見るからに不気味で、芸人さんってこんなことまでさせられてかわいそうだなって思ってたときだった。

                タカが本気で泣き出したんだ。正確なところは忘れちゃったけど、たしか、毎日忙しくてろくろく寝られない毎日なのに、どうしてこんなことまでしなくちゃいけないのってね。あれは本音だったと思う。表情がマジ顔だったもの。

                そうしたらトシが言ったんだ。おまえ、思い出してみろよ。北海道にいたころ、2人して、寝る暇もないくらい売れっ子になりたいって言ってたよな。それがこうしてかなったんだよ。ほら、行くぞ、みたいな、そんな感じだったと思う。

                こうなったらいいなと思うことはたくさんあるけれど、実際にそうなってみると、さらなる難題が待ち受けているものだ。でも、もう引き返せない。いつだってそうだよね。

                だから、いろいろ錯綜してプチパニックになりそうなとき、いつもタカアンドトシのことを思い出す。そうすると、みんながんばっているんだって思えてくるんだ。こんなこと、タカアンドトシはちっとも知らないだろうけど。


                「『生きること』と『ただ生きること』はぜんぜん違う」。前にNHKドラマ「プラトニック」で堂本くんが言ってたっけ。たとえそれがつらいことであっても、なんにもないよりずっといいんだ。むしろ人らしく生きるためには新しい問題と格闘することが必要なんだよね。そろそろ同じこと考えていないで、別のステージに立ってみようかな。
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                瀕死の白鳥が天に召された日 10:39
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                  マイヤ・プリセツカヤの「瀕死の白鳥」にみせられて、当時、VHSのビデオを買って何回も見入ったっけ。あのころの感動がよみがえってきた。プリセツカヤさん、ありがとう。あなたのバレエは天国でもきっと映えますね。どうぞ安らかに。
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                  深い喜び、深い悲しみ 22:55
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                    これ、去年から流れているスパリゾートハワイアンズのテレビCMなんだけど、めちゃくちゃ好きなんだ。ローカル感たっぷりだけど、待ちきれないワクワク感が伝わってくる。家の中で水着になんかなっちゃって、浮き輪なんか準備しちゃって、「早く行きたーい!!」って気持ちがビンビンしてるよね。こりゃ連れていかなきゃでしょ。

                    こんなふうに、心の奥底から湧きあがるようにうれしかったり楽しかったりする感じ、もう、忘れちゃったな。年を重ねていくうちに、もっと深い喜びも、そして、もっともっと深い悲しみも経験しているはずなのに、いつだって、すぐに「それでどうするか」を考えなければならなくて、じっくりと喜びや悲しみにくれる時間さえなくしていたような気がする。

                    どういうんだろう。しょせん努力で解決できることなんて大したことじゃない。私がすぐれた人物だからおなかいっぱいごはんが食べられるわけでもないし、寒くても暑くてもエアコンで快適に過ごせるわけでもないんだもんね。ハワイアンズに行けるような平和な国に生まれたんだから、それ以上の悲しみや苦労は自分でなんとかしないといけない気がしてくる。内紛が起こっている地域の人たちにこそ神様のご加護がありますように。

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                    さすが東大な学部長さんのあいさつに太った豚のわが身を恥じる 05:33
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                      感想とか書きたいけど、まずい、ちょっといまは余裕がない。でも、うろうろしているうちに忘れちゃうと困るから、とにかくこころが熱いうちに貼らせてもらおう。あああっ!もしかしてこういうことしちゃいけないって言ってるんだっけ。こりゃまずい!! やだ〜、どうしよう(おろおろ) 一読して思ったこと。わたしは太った豚だ。頭だけじゃなくてからだ全体だもん。恥ずかしくて生きていけやしない。これからどうすればいいんだろう。とにかく、まずはツァラトゥストラを調べなきゃ!!!!! そして自分自身を灰になるまで燃やそう。まずはダイエットからだ(そっちかい)。

                       

                       


                       

                       

                       

                      平成26年度 教養学部学位記伝達式 式辞


                      皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。また、ご列席のご家族の皆様方にも、心よりお祝い申し上げます。今年度の教養学部卒業生は175名で、そのうち女性は50名、留学生が1名です。 全学の式典はすでに午前中、改装されたばかりの安田講堂で挙行されましたので、ここでは教養学部として、あらためて皆さんとともにこの日を慶びたいと思います。

                       

                      東京大学の卒業式といえば、もう半世紀も前の話になりますが、東京オリンピックが開催された年である1964年の3月、当時の総長であった経済学者の大河内一男先生が語ったとされる有名な言葉が思い出されます。曰く、「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」。


                       当時、私はちょうど中学校にあがる年頃でしたが、この言葉は新聞やテレビでかなり大きく報道されましたので、鮮明に記憶に残っております。また、子供心に、さすが東大の総長ともなると気の利いた名言を残すものだと、感心したこともなんとなく覚えております。皆さんの中にも、どこかでこの言葉を耳にしたことのある人は少なくないでしょう。


                      ところが、これはある機会に一度お話ししたことがあるのですけれども、じつはこの発言をめぐっては、いろいろな間違いや誤解が積み重なっているんですね。


                      まず第一の間違いは、「大河内総長は」という主語にあります。というのも、これは大河内先生自身が考えついた言葉ではなく、19世紀イギリスの哲学者、ジョン・スチュアート・ミルの『功利主義論』という論文からの借用だからです。

                       

                       東大の総長ともあろうものが、他人の文章を無断で剽窃したのか、と思われるかもしれませんが、もちろんそういうわけではありません。式辞の原稿を見てみますと、そこにはちゃんと、「昔J・S・ミルは『肥った豚になるよりは痩せたソクラテスになりたい』と言ったことがあります」と書かれています。「なれ」という命令ではなく「なりたい」という願望になっている点が少し違っていますが、それはともかく、ここでははっきりJ・S・ミルの名前が挙げられていますから、これは作法にのっとった正当な「引用」です。ところが、マスコミはまるでこれが大河内総長自身の言葉であるかのように報道してしまった。そして、世間もそれを信じ込んでそのまま語り継いできたというのが、実情です。

                       

                       次に第二の間違いですが、これはもっと内容に関わることです。じつは、ジョン・スチュアート・ミル自身は「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」とも「なりたい」とも、全然言っていないのですね。さきほど題名を挙げた『功利主義論』の日本語訳を見てみますと、こう書いてあります。


                      満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよい。満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスであるほうがよい。

                      大河内総長の言葉とはだいぶ違いますね。

                       

                      ちなみに、英語の原文はこうなっています。

                      It is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied.

                       

                      この原文を見ると、どうやらさきほど引用した日本語訳は正確なようですから、大河内総長のほうがこれをまったく別の文章に改変してしまったとしか考えられません。たぶん漠然と記憶に残っていた言葉を、自分の言いたいことに合わせて適当にアレンジしたのでしょう。その結果、「満足した豚」は食べたいものを食べたいだけ食べるということで「肥った豚」になり、「不満足なソクラテス」は食べたいものにも安易に手を出さないということで「痩せたソクラテス」になったものと推測されます。しかしこれでは原文とまったく違ったニュアンスになりますから、ミルが語った言葉として紹介するのはさすがに問題なのではないか。下手をすると、これは「資料の恣意的な改竄」と言われても仕方がないケースです。

                       

                      ところが、間違いはこれだけではないんですね。じつは、大河内総長は卒業式ではこの部分を読み飛ばしてしまって、実際には言っていないのだそうです。原稿には確かに書き込まれていたのだけれども、あとで自分の記憶違いに気づいて意図的に落としたのか、あるいは単にうっかりしただけなのか、とにかく本番では省略してしまった。ところがもとの草稿のほうがマスコミに出回って報道されたため、本当は言っていないのに言ったことになってしまった、というのが真相のようです。これが第三の間違いです。

                       

                      つまり、「大河内総長は『肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ』と言った」という有名な語り伝えには、三つの間違いが含まれているわけです。まず「大河内総長は」という主語が違うし、目的語になっている「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」というフレーズはミルの言葉のまったく不正確な引用だし、おまけに「言った」という動詞まで事実ではなかった。というわけで、早い話がこの命題は初めから終りまで全部間違いであって、ただの一箇所も真実を含んでいないのですね。にもかかわらず、この幻のエピソードはまことしやかに語り継がれ、今日では一種の伝説にさえなっているという次第です。


                      さて、そこで何が言いたいかと申しますと、まず、皆さんが毎日触れている情報、特にネットに流れている雑多な情報は、大半がこの種のものであると思った方がいいということです。そうした情報の発信者たちも、別に悪意をもって虚偽を流しているわけではなく、ただ無意識のうちに伝言ゲームを反復しているだけなのだと思いますが、善意のコピペや無自覚なリツイートは時として、悪意の虚偽よりも人を迷わせます。そしてあやふやな情報がいったん真実の衣を着せられて世間に流布してしまうと、もはや誰も直接資料にあたって真偽のほどを確かめようとはしなくなります。

                       

                       情報が何重にも媒介されていくにつれて、最初の事実からは加速度的に遠ざかっていき、誰もがそれを鵜呑みにしてしまう。そしてその結果、本来作動しなければならないはずの批判精神が、知らず知らずのうちに機能不全に陥ってしまう。ネットの普及につれて、こうした事態が昨今ますます顕著になっているというのが、私の偽らざる実感です。


                      しかし、こうした悪弊は断ち切らなければなりません。あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、文系・理系を問わず、「教養学部」という同じ一つの名前の学部を卒業する皆さんに共通して求められる「教養」というものの本質なのだと、私は思います。

                       

                       今朝の本郷での卒業式では、学生代表の文学部の学生さんが、答辞の中でたいへんいいことを言っておられました。私も今朝初めて聞いたばかりですから正確には再現できませんが、おおざっぱに要約すれば、「どんな言葉にも名前が記されている。たとえ匿名の言葉であっても、それを発した人間の名前は刻印されている。しかしそれで自己規制したり沈黙したりしてはならない。私たちは自分の名前において言葉を語らなければならない」といった趣旨であったと思います。

                       

                      まことにその通りで、これから皆さんが語る言葉には、常に名前が刻まれています。それは皆さんが普段名乗っているいわゆる「名前」だけでなく、東京大学という名前であり、教養学部という名前でもあります。ですから皆さんは、今後どのような道に進むにせよ、研究においても仕事においても、けっして他者の言葉をただ受動的に反復するのではなく、健全な批判精神を働かせながらあらゆる情報を疑い、検証し、吟味した上で、東京大学教養学部の卒業生としてみずからの名前を堂々と名乗り、自分だけの言葉を語っていただきたいと思います。


                      ところで、もう一度「豚とソクラテス」に戻りますが、私ははじめてこの言葉を聞いたとき、子ども心に、どうして「肥った豚」か「痩せたソクラテス」のどちらかでなければいけないのだろうか、と不思議でなりませんでした。どうせなら「肥ったソクラテス」になればいいじゃないか、と思ったわけです。


                      そこで大河内総長の式辞原稿をもう一度見てみますと、そこには例の有名なフレーズに続けて「我々は、なろうことなら肥ったソクラテスになりたいのですが」とも書かれていました。じっさい、ソクラテスであるためには必ず痩せていなければならないという道理はありませんから、この点では私もまったく同意見です。ただ、ぶくぶくと肥ったソクラテスというのもなんとなくイメージしにくいですね。本日の本郷での卒業式では、この3月末で6年間の任期を終えられる濱田総長が式辞の最後でとどめの「タフ&グローバル」を口になさいましたが、ここではその濱田総長と、半世紀前の大河内総長に最大限の敬意を表して、2人の総長の合わせ技で「タフでグローバルなソクラテスになれ」、と皆さんに申し上げておきたいと思います。

                       

                      さて、かく言う私も、この3月で教養学部長の任期は終了いたします。また、それと同時に、駒場の教員としても退職いたします。いささか恥ずかしげもなく月並みな言い方をすれば、今日は皆さんの卒業式であると同時に、私自身の卒業式でもあるわけです。人生のひとつの区切りを皆さんと一緒に迎えることができたというのは、何かのご縁かもしれませんが、ともあれこの壇上から式辞を述べるのも、これが最後の機会となりますので、私は大河内総長の「痩せたソクラテス」でもなく、濱田総長の「タフでグローバル」でもなく、自分自身が本当に好きな言葉を皆さんに贈って、この式辞を終えたいと思います。それはドイツの思想家、ニーチェの『ツァラトゥストゥラ』に出てくる言葉です。


                      きみは、きみ自身の炎のなかで、自分を焼きつくそうと欲しなくてはならない。きみがまず灰になっていなかったら、どうしてきみは新しくなることができよう!


                      皆さんも、自分自身の燃えさかる炎のなかで、まずは後先考えずに、灰になるまで自分を焼きつくしてください。そしてその後で、灰の中から新しい自分を発見してください。自分を焼きつくすことができない人間は、新しく生まれ変わることもできません。私くらいの年齢になると、炎に身を投じればそのまま灰になって終わりですが、皆さんはまだまだ何度も生まれ変われるはずです。これからどのような道に進むにしても、どうぞ常に自分を燃やし続け、新しい自分と出会い続けてください。もちろん、いま私が紹介した言葉が本当にニーチェの『ツァラトゥストゥラ』に出てくるのかどうか、必ず自分の目で確かめることもけっして忘れないように。もしかすると、これは私が仕掛けた最後の冗談なのかもしれません。


                      皆さんの前に、輝かしい未来が開けますように。そして皆さんが教養学部で、この駒場の地で培った教養の力、健全な批判精神に裏打ちされた教養の力が、ますます混迷の度を深めつつあるこの世界に、やがて新しい叡智の光をもたらしますように。

                       万感の思いを込めて、もう一度申し上げます。皆さん、卒業おめでとう。

                       

                      平成二十七年三月二十五日

                      東京大学教養学部長 石井洋二郎

                       

                       



                       以上、東大のホームページからお借りしました

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